交通事故の被害者が、一般的業種に区分されない職業だった場合の収入証明は?

交通事故の被害者になった場合、加害者に損害賠償を請求するには、収入額を証明する資料をそろえなければなりません。収入を証明する資料として、もっともポピュラーなのは源泉徴収票です。民間企業に勤務する会社員であれば、会社に頼めばすぐに出してもらえます。

では、一般的業種に区分されない特殊な職業に就いている人は、どうやって収入額を証明すのでしょうか。

農業従事者の場合

被害者が農業に従事している場合には、その収入や必要経費の証明は、他の職業とは大きく異なります。というのは、そもそも損益計算との関係が浅いために、その収益を裏付ける帳簿などがない場合がほとんどだからです。

農業従事者の収益の出し方については、原価計算方式による場合と、農業所得標準率表を利用する場合とがあります。

原価計算方式は、作付面積によって作付物ごとに、主産物・副産物などの農産物売渡価格の中から、資本利子や経費などを差し引き、それに家族労働費を加えて収益を出す方式です。家族労働費は、農林水産省が管轄する各県の統計調査事務所が公表している各種農産物の生産費調査を参考にできます。

また、農閑期に出稼ぎに行く場合は、その収入を加えても構いません。なお、原価計算方式ですと、かなり細かい計算をしなければならないので、市役所や町役場にある農業所得標準率表を使って簡単に算出する方法もあります。

この方法だと、すぐに農業者の収入が計算できますが、一般的には計算結果が実際の収入よりも低くなってしまうというデメリットもあります。

製造業を個人経営している場合

製造業には、衣料品や食料品から精密機械までたくさんの職種があり、その営業規模も千差万別です。そのため、収益を算出する定型的な基準をつくることが非常に困難です。収益を証明できる資料があれば、それを使用できますが、証明できなければ、一般の統計資料に頼るしかありません。

統計資料の一例として、総務省統計局が発表している個人企業経済調査が挙げられます。この資料を見れば、業種別の平均的な売上や営業利益などが把握できます。また、従業員を雇っていた場合や家族が一緒に働いていた場合は、その人数によって被害者の寄与程度を考慮に入れて算出しなければなりません。

そして、会社の利益に寄与率を乗じたものが本人の純利益となります。

大工・左官などの場合

大工・左官といっても、大まかに分けて2種類あると考えられます。1つは、いわゆる棟梁などのように、直接、施主や建築業者から仕事を請け負っているケースで、もう1つは、それらの棟梁の下で雇われて働いているケースです。

ここでは、自分で請け負って仕事をしている場合を説明します。この場合には、取引先との契約書、あるいは税務署への申告などにより、収入を算出できます。また、大工・左官といわれる人たちの場合には、それぞれ県単位で同業者の組合があり、その組合の協定によって、収入が立証できることもあります。

もちろん、生活費はこの金額から控除しなければなりません。稼働年齢については、自賠責保険でも認めているように67歳までと捉えておきましょう。

芸能人・スポーツ選手の場合

被害者が芸能人やスポーツ選手の場合は、どうなるのでしょうか。芸能人は、プロダクションに所属して一定の給料をもらい、その他に地方公演などの契約がある場合には、契約書に基づいて収入額を算出できます。また、プロ野球選手のように年俸が決まっていたり、年間契約で契約金をもらっている場合には、その選手の過去3年間の平均額をとって算出することが多いです。

いずれにしろ、歩合制の仕事もありますので、収入の把握と証明が難しいのは事実です。それと同時に、これから活躍できる期間がどれくらいあるかについての判断も困難です。これについては、プロダクションの従業員や同僚に証言してもらったり、先輩の中から同程度の人材を抽出して統計的に算出することがあります。

ホステスなどの場合

ホステスや芸者といった職業は、収入額について争われることがあります。それは、固定給以外にチップやドリンクバックなどのように偶発的な収入も含めて算出するからです。偶発的な収入は納税していないことが多いため、所得額の立証が困難です。

また、生活費と営業上の経費との境界線があいまいなことも、争いの原因となっています。収入は確実に証明しなければならないので、1日1万円を稼いでいたとしても、それを証明できなければ加害者に請求できません。チップは、過去の実績から引き続きもらうことができたであろう額を証明できれば、賠償の対象となります。

なお、ホステスの衣服費や美容費などの経費については、営業地域格差や同一地域での同業者の比較検討を加えたうえで、おおよその割合を認定しています。

バーのホステス、ウエイトレス、料理店の女将などは、だいたいの見当として30%から40%の経費控除が認められます。収入の中でも、客をゴマかして不当に得た収入や、売春に近い振る舞いによって得た収入のように、わずかでも違法性がある場合は収入額に加算されません。

また、ホステスの稼働年齢は、35歳くらいまでが限度とされています。

自由業者の場合

医師・公認会計士・税理士・弁護士などの自由業の場合にも、収入を証明するには帳簿、伝票、源泉徴収票など、あらゆる資料をもとにして算出しなければなりません。これらの職業の人は、比較的高額な所得があると考えられますが、そのうち経費をどれくらいと認定するかは、大きな問題です。

医師の場合には、かつて保険診療収入の72%が必要経費として認められていました。納税額についても、他の職業に比べて多くなりますが、税金は控除しない扱いとなっています。

年金生活者の場合

年金で生活していた人が交通事故で死亡した場合、受給していた年金は損害として請求できるでしょうか。かつては年金の受給権は一身専属的なものであることから、逸失利益を否定する判例もありましたが、現在は最高裁もこれを肯定しています。

平均寿命までの受給権喪失額から本人の生活費を控除し、中間利息も控除して算出します。また、身体障害を理由とする障害年金についても、逸失利益として認められています。ただし、遺族年金については、受給者本人の生活保障のためのもので、死亡により権利が消滅することを理由として、逸失利益は認められていません。

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